新語・流行語大賞『働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相』が2025年の年間大賞に

12月1日、現代⽤語の基礎知識 選「2025 T&D保険グループ新語・流⾏語⼤賞」が発表された。
年間大賞には、日本初の女性首相となった高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」が選ばれた。「働いて〜」は高市首相が総裁選に勝利した際に述べた言葉で賛否も生んだが、首相経験者では鳩山由紀夫元首相の「政権交代」(2009年)以来16年ぶりの年間大賞、安倍晋三元首相の「1億総活躍社会」(2015年)以来、10年ぶりのトップテン受賞となった。
「新語・流行語大賞」は、1年の間に発生したさまざまな「ことば」の中で広く世間の目・口・耳をにぎわせた、その年を代表する「ことば」を選ぶ賞で、今年は「⻑袖をください」「リカバリーウェア」など30の「ことば」がノミネートされ、この中からトップテンとして10の「ことば」が発表された。
トップテンには、「エッホエッホ」「国宝(観た)」などが選ばれた。
また、選考委員特別賞には、ことし6月に亡くなった、読売巨人軍の長嶋茂雄終身名誉監督の「ミスタープロ野球」が選ばれた。
トップテンに選出された「ことば」の解説は、次の通り。
【エッホエッホ】ネットにあがっている画像や動画を別の人がオチをつけて改変して拡散して楽しむミーム。今年、話題になったミームが「エッホエッホ」。オランダの写真家ハニー・ヘーレさんが投稿したメンフクロウのヒナの写真が元祖だという。手足を一所懸命動かして必死にどこかへ向かっている。これを、さして緊急でもない話を「伝えなきゃ」という動作に見立てたところが秀逸で、一気に拡散したのもうなずける。かねてより物事は「ちょっと聞いて」から動き出すもの。銭形平次だって子分が「てぇへんだ、てぇへんだ!」と走りこんでくるところからが出番である。情報が瞬時にSNSで伝わる時代、「エッホエッホ」の語感が子どもからおとなまで、つい言いたくなるフレーズとして派生し広がった。
【オールドメディア】このところの首長選挙や国政選挙において、”影響力のあるのはSNS。新聞・テレビは今や不要のオールドメディア”との論評が出回るようになった。しかし、SNSには宣伝媒体の面もあり、宣伝・広報戦略で商品を話題にして売り上げにつなげようというのは広告業界のセオリーだ。それが今、政治の世界に適用されてSNSでバズれば当選。選んだのは有権者だが、その政治家について検証・分析・考察する歴史のあるメディアを「オールド」と批判にさらし、切り抜き動画や短時間で一方的な意見だけを都合よく熱狂的に流すことで支持を得る方法は、あまりにも無秩序なのではないか。アメリカのトランプ政権では、ホワイトハウス報道官がインフルエンサーやネットメディア優先で会見を進め、伝統的な報道機関との対立を鮮明にしている。SNSの熱狂に流されることなく、オールドメディアとの違いを見分ける力をつけたい。
【緊急銃猟/クマ被害】2025年10月15日、全国初の緊急銃猟によるクマの駆除が宮城県仙台市で行われた。今年4月からのクマによる人身被害件数は10月末時点で196人。クマが異常出没し、OSO(オソ)18が駆除された2023年の219人に次ぐ多さだ。死亡者数は23年の6人を上回る12人と過去最悪。住宅に、畑に、庭先の柿の木に、スーパーに、自動ドアを開けて役場の中に侵入してくる。アーバンベアが問題となった23年よりさらに人を避けずに、一般住民への危険が高まった。登山・キャンプではクマ鈴の効果も危ぶまれ、熊よけスプレーを使ってさえも逃走しない異常行動も確認されるなど、明らかに様子の変化がうかがえる。クマは「運悪くまれに遭遇」する野生動物であったが、いま「隣にある脅威」となった年であった。
【国宝(観た)】観客動員数1231万人、興行収入173.7億円を突破、邦画実写の興行収入ナンバー1に輝いた。動画配信サービスが普及している現在、この記録的数字は劇場に足を運ぶ人の熱量そのものを表している。「国宝観た?」と聞かれたときに、「観た」もあれば「まだ」の声もある。観て感動した人は何回も観たり、原作を読みに走ったりする。鑑賞後の強烈なインパクトから逃れられないのだ。鑑賞後に語られるのは、女方がよくはまった吉沢亮さん、横浜流星さんのお二人に田中泯さんの凄み、そして映像の美しさだ。歌舞伎の舞台はこんなにもダイナミックなのだ、とみせてくれるのは映画ならでは。歌舞伎の有名場面カタログ的な親切さも盛り込まれた、あっという間の3時間。実際の歌舞伎も観たくなる現象を生んだ。
【古古古米】2025年5月31日、随意契約による政府「備蓄米」の店頭販売が始まった。先陣を切ったスーパーでは500袋が30分で完売というほど家庭にお米が足りていなかった。野党党首に「あと1年たったら動物の餌になる」といわれてしまった2021年産備蓄米・古古古古米であるが、古米、古古米、古古古米……と1年たつたびによび名も変わる。昨年から発生した令和の米騒動以来続いていた価格の高騰もようやく低下傾向を見せ、これで新米が出ればさらに買いやすくなるに違いないと安堵が広がったのもつかの間、今年8月から再び上昇を始めた。昨年も「新米が出れば落ち着く」と聞いていたが、その再来とはこれいかに。いったいどうなってるの?との声も多く出た。どんな商品も生産者と消費者は常にせめぎあいの関係はあっても、敵・味方ではない。ところが、お米のことになると「今度の農林水産大臣は消費者側」だの「生産者側」だのという声が聞こえてくる。日本の農業政策というものが垣間見えた騒動である。
【戦後80年/昭和100年】2025年は、1926年12月に始まる「昭和」で数えると100年という節目の年である。そして1945年8月の終戦から始まる「戦後」も、80年という区切りの年となる。ふたつの節目を、さまざまなところで目にした1年だろう。1995年の「阪神・淡路大震災」からは30年、オウム真理教の「地下鉄サリン事件」からも30年という節目の年でもあるが、昭和、平成から令和へとつながる今、わたしたちはどんな時代を生きているのだろうか。簡単に答えのみつかる問題ばかりではないからこそ、だれもがさまざまな問題を抱えつづけ、考えつづけなければならない時代なのだろう。日本の総人口に占める戦後生まれの割合は約88.8%と9割を占め、多くが戦争を知らない世代であるわたしたちは、昭和史や歴史を学び直して平和でいつづけるための努力をする必要がある。歴史と向き合い、学び、見つめ直すには、書籍や舞台、映画などの学びの教材がいくらでもあるのだから。
【トランプ関税】2025年1月20日、第2次トランプ政権が発足。就任早々トランプ関税の発動が始まった。4月には日本を含む貿易相手国に「相互関税」をかけるとSNSでリストを公表。関税率が大統領権限で決められるのかという法律的根拠も、数値の計算式もよくわからないながらも、とにかく交渉せざるを得ない前代未聞の貿易関税は世界各国をふりまわした。関税の見直しを求めて日本から派遣されたのは、赤澤亮正経済再生担当大臣(当時)。ホワイトハウスでMAGAキャップをかぶって見せたり、自身を「格下も格下」と表現するなどの場面もあったが、結果は関税率15%で決着。トランプ政権を相手に粘り強い交渉をやりとげ、帰国する赤澤大臣に頼もしさを感じた国民は多い。
【二季】花見を終えたらもう暑い、さんまがおいしいのにまだ暑い。「暑い暑い」が挨拶の定番になってしまったこの夏、もう一つ加わったのが「いったい、いつまで続くの?この暑さ」である。春のコートは出番なく、秋の長袖シャツは1,2回着たかどうか。春と秋の存在感が薄くなったことを実感した年だった。アパレル業界は、すでに1年を二季ととらえ商品のシフトチェンジを始めている。この二季化を観測データから科学的に明らかにしたのが、三重大学の立花義裕教授の研究グループだ。1982年から2023年の42年間で日本の夏の期間が約3週間長くなり、春と秋は短くなっているという。要因は地球温暖化。今年も11月に「国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議。COP30」が開かれた。世界的な世論調査会社の調査によると、COP30が単なる象徴的なものになると回答したのは49%。資金を負担する先進国で不満が高まっているという。多くの人が「四季でなく二季だな」と感じはじめた今、温暖化をとめることを考えたい。
【働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相】ここのところとんと聞かなくなった気合の入った物言いに、働き方改革推進に取り組む経済界はド肝を抜かれた。午前3時の公邸入りはさらなる物議をかもし、議員宿舎のファックス紙詰まりという報道もあったが、一方で、共感した昭和世代も実は多かったのではないか。「仕事ってそういうものだったな」と。多様性を尊重する働き方を実現しているところもあれば、道半ばのところもあるのが現実だ。初の女性総理、働いて働いて働いて働いて今があるのは間違いない。国内・外交、問題は山積み。どれも油断は許されない。働いて働いて働いて働いて働きながらも、人を活かし自分を伸ばす、高市流「シン・ワークライフバランス」で、強靭で幸福な日本をつくっていこうではありませんか。
【ミャクミャク】2022年、インパクト大の、不気味なキャラクターが誕生した。2025年日本国際博覧会の公式キャラクターミャクミャクだ。前評判がいま一つであった大阪・関西万博もふたを開けてみれば入場者数は右肩上がり。並走するようにミャクミャク人気もうなぎ登り。着ぐるみには人だかりができ、関連グッズが飛ぶように売れると連日ニュースを賑わせた。思い出してみると1970年開催の日本万国博覧会で建てられた太陽の塔。これもまた胴体中央の顔「太陽の顔」はおかしな顔だ。このおかしな顔こそが作者・岡本太郎さんの底知れないエネルギーを55年後の現在も発し続けているのは間違いない。この先、ミャクミャクは大阪のどこで遊んでいるのかな。